ハロウィンが終わった11月1日、近所のコンビニの入口に、ハロウィン仕様のお菓子がワゴンに無造作に積まれていました。
「売れ残りのワゴンセールだから安いだろう」と思い、何気なく購入。
しかし、レシートを見ると、値段はまさかの定価。思わず二度見しました。
実はこの「思い込み」こそが、ヒューリスティックスと認知バイアスによるものです。
誰でも陥る可能性がある、無意識の罠なのです。
目次
優秀な人でも騙される「脳の近道」
このワゴンセールでお菓子を購入したのは、なんとマーケティングの専門家。
それでも「安売りに違いない」と錯覚してしまいました。
なぜこんなことが起こるのか?
人間の脳は、膨大な情報を一つひとつ吟味するにはエネルギーを使いすぎるため、経験則をもとにすばやく判断する仕組み=ヒューリスティックスを使っています。
この「脳の近道」は、時に私たちを誤った判断に導きます。これが認知バイアスです。
ワゴンセールに無造作に積まれた商品を見ると、「安いに違いない」という過去の経験が発動し、実際の価格を確認せずに購入してしまうのです。
ヒューリスティックスは飲食店でも多用されている
このような現象はコンビニだけではありません。
たとえば飲食店で見かける「セットメニュー」もそのひとつです。
「セットだからお得」と思い込みがちですが、実際には単品価格の合計と同じケースも多くあります。
それでも私たちは「セット=割引」という認知バイアスに影響され、即決してしまうのです。
「一瞬立ち止まる」だけで損をしなくなる
このようなヒューリスティックスや認知バイアスから抜け出すには、ほんの少しの意識で十分です。
「本当にこれはお得か?」「自分は今、思い込みで判断していないか?」と、一瞬だけ立ち止まって考えるクセをつけることが、損しない購買行動の第一歩になります。
中小企業こそヒューリスティックスを正しく活用しよう
逆にこの仕組みを正しく理解すれば、中小企業のマーケティング戦略にも役立てられます。
例えば、バラバラの商品をただ並べるのではなく、セットメニューとして提案するだけで、顧客にとってわかりやすく、購買意欲を刺激することができます。これはヒューリスティックスを応用した手法です。
もちろん、認知バイアスを悪用するのではなく、倫理的な範囲で顧客にとっての価値を見せる工夫が重要です。
専門家の力を借りて一歩踏み出そう
「ヒューリスティックス」や「認知バイアス」といった言葉に難しさを感じた方も多いかもしれませんが、実はすぐに実践できる内容です。
もし「自分でやってみたけれど難しい」「何から始めればよいかわからない」という都内の中小企業事業者の方であれば、商工会議所などの支援機関に相談するのもひとつの手です。
無料で専門家の派遣を受けられる制度などもあるため、ぜひ活用してみてください。
この記事を書いた人
山口亨(中小企業診断士) UTAGE総研株式会社 代表取締役
公的支援機関を中心に、長年にわたり中小企業支援に携わる経営コンサルタント。
代表著作に「ガンダムに学ぶ経営学」「ドラクエができれば経営がわかる」がある。